骨董豆知識

鑑定士が教える 掛軸・浮世絵の専門用語と鑑定ポイント

掛軸や浮世絵、絵画等の古書画についての用語や簡単な見方などをご紹介致します。

品物を買取査定する上で、
作家物の場合は作者が重要な点になり、時代物の作品であればどの時代に作られた物か、もしくはその時代の作品の希少性などの要素で査定しています。
すべての作品において下記にも掲載いたしましたが、品物の状態やその品物が本画であるか否か、複製品が沢山出ている物ではないかなど様々な要素で判断致します。

古書画の保管状態を表す用語

シミ

掛軸などに多く見受けられますが、掛軸などを畳んだままで長時間しまっておくと、湿気がたまり本体に付いている糊などからシミが発生して汚れが出てしまう場合があります。

折れ

こちらもよくある事ですが、掛軸を強く巻きすぎると折れやシワの原因になります。一度折れが入ってしまうと表具師さんに直してもらわないと戻りませんので取扱には注意してください。

虫喰い

長期間、蔵などに納めていると虫などに喰われてしまい品物を傷めてしまう事がございます。掛軸や浮世絵・和本などの和紙を使用した物や、絹を使用した絹本も虫喰いの被害に遭いやすいので防虫剤などを入れて保管しておく事をおすすめします。

ワレ

油彩などの絵画は、古くなるとキャンバスの張りの緩みや劣化・硬化などの原因で細かなワレが起こり、ひどくなると大きくヒビが入るようにワレが生じてしまいます。ヨーロッパ絵画の古い物などは修復師が定期的にワレ止めの処理を施していると言われます。

古書画の種類、鑑定・評価を表す用語

後銘(あとめい)
こういった物はあまり評価の対象としてお話しをしたくないのですが、古書画・絵画全般である事で、有名な作者の作品として売買する為に無銘作品に後で有名な作者の銘を入れてしまう(偽物)ケースが多々あります。
良く聞く作者としては谷文晁の「カラス文晁」などは100本中99本が偽物と言われる程そういった作品が世の中に出回っています。ちょっとした見分け方をご紹介しますが掛軸の場合墨の色を見ると言う事です。これは作品として描かれている絵の墨の濃さと銘部分の墨の濃さがあまりに違っている場合は、私は真筆という判断は出来ないですね。

後絵(あとえ)
先ほどは作者自身の偽物でしたが、この後絵(焼物でもある事ですが)というものは元々水墨山水(すいぼくさんすい)の作品は評価が低い為、別の人物が色を挿して青緑山水(せいりょくさんすい)に仕上げてしまい値段をつり上げてしまう事です。同時にこういった作品の特徴として後銘が同時に入っている物も多いですね。

捲り(まくり)
捲りとは掛軸や額の形になる前に紙や絹に絵を描いただけの状態の物を差します。もちろん掛軸・額・屏風やふすまになっていた書画をはがした状態になっている物も捲りと言われています。

表装・表具(ひょうそう・ひょうぐ)
捲りなどから掛軸、屏風、衝立、額、画帖、巻物などに仕上げる事を言います。
この表装・表具という言葉は安土桃山以降に使われるようになったと言われていて、それ以前は表補衣 (ひょうほえ) とされていました。

裏打ち(うらうち)
捲りや浮世絵などの状態のものの裏側に紙や布などを張り丈夫にすること。
掛軸などにするときの工程ですが、よく裏打ちだけの状態で置かれている事が多いのでちょっとご紹介致しました。ちなみに浮世絵の場合は裏打ちをしていない方が評価が高いのでご注意ください。

肉筆(にくひつ)
これは作者本人が実際に絵を描いた状態の物を指します。絵画作品の評価としては一番評価が高い物がこちらの作品群です。複製品に比べて本人の描いた作品となると著名な人物ほど稀少になりますので、一般的に複製品として出ている物に比べては数倍〜数十倍価格が高くなる物も御座います。(世界的に有名な作品になればこれ以上の評価の差になります。)

リトグラフ
リトグラフという言葉は「リト」=石、の意味とされていますが、最近ではアルミ板他様々な材料を使ったり版材は多種多様です。
平版(表面に凹凸のない版形式)の代表的なもので、一般的に絵画作品としては有名な技法です。水と油の反発を利用して描かれている部分には油性にして、描かれていない部分には保水性にする事でインクで刷ると描かれている部分にインクがのる仕組みです。ピカソやルオーを初め様々な作家がこの技術を多様したとされています。

共シール・共箱

作者がその作品の証明として箱やシールに名前を書いて作品に付けた物、共シールの場合は本体額の裏面に作品名と作者自身の名前等を明記した物を貼り付けて有ります。
共箱の場合は箱蓋部分の表面に作品名、蓋裏部分には作者名を入れているのがスタンダードです。ですが古い作品は箱が破損してしまったり額装に代えている場合がありますので蓋の一部分だけ残している場合もあります。
評価するときの重要な加点に繋がりますので必ず一緒に保管しておく事をおすすめします。

鑑定シール・識箱

作者の親族や、作品が沢山展示してある美術館など本人以外の人物や取り扱っている施設が発行したシールや箱書を指します。
同じ作者でも様々な場所で鑑定している場合もありますので、必ずしも良い評価に繋がるとは言えませんが、加点になる事が多いです。本人の共シールや共箱よりも評価は下がります。

今回ご紹介した用語は、わかりやすいものを抜粋して説明させていただきました。
お持ちの掛軸や絵画の真贋を変えることは出来ませんが、定期的に掛軸や浮世絵を開き風を通す、直射日光にあてないなど正しい保管方法を心掛ける事で、評価を下げずに次の人に渡す事ができます。是非お手元に古書画が有りましたら一度広げてご覧になって見てはいかがでしょうか?

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