子はかすがい〜鎹(かすがい)直し
先日、お客さまから修復についてお問い合わせのメールを頂きました。
こんにちは、突然のご連絡失礼いたします。
イギリスのアンティーク皿の修復方法についてお聞きしたいことがありネットで何度か調べてみたものの分からず
今回問い合わせさせていただきました。
アンティークの皿にひびが入っているものがあります。
そこにホッチキスの針のようなもので二か所ほどとめてあるのですが
硬い陶器に針のようなものを刺すと割れてしまうのではないかと思います。
なぜ皿にホッチキスのような針が刺せるのか、
どのようは修復方法なのか
もし分かるようでしたら教えていただきたいと思います。
お時間のある時にでもお返事いただけたら幸いです。
宜しくお願い致します。
上の画像が添付されていました。
メールを読んで、ん〜確かに…。
この修復の名前は鎹(かすがい)直しというのですが、
実際にどうやって直すのか…。
普通に考えれば陶磁器に穴を開けるなんて割れてしまいますよね。
私もどうやって直すのか知らなかったので、
弊社修復士に聞いてみました。
鎹(かすがい)直しのはじまりは中国
室町時代、将軍足利義政(在位1449~73)が所持することになった青磁茶碗(南宋時代、龍泉窯)の底にひび割れがあったため、これを中国に送り代わりの茶碗を求めました。
しかし当時の中国には、そのような優れた青磁茶碗はすでになく、ひび割れを鎹(かすがい)で止めて日本に送り返してきました。その鎹(かすがい)が、大きな蝗(いなご)のように見えるため、馬蝗絆と名づけられ、この茶碗の評価は一層高まりました。繕いの美学とでもいうのでしょうか?佗茶の精神にぴったりだったのではないでしょうか。
現在は、重要文化財として東京国立博物館に収蔵されています。
どうやって鎹(かすがい)の穴をあけるのか?
具体的な修復方法は、縄文時代の火起こしの道具・まいぎり(紐を巻き付けた木製の道具)のような道具の先端に金剛砂(研磨剤)をつけながら少しずつ穴をあけていきます。金属製のもので穴を空けると割れてしまうようです。
空けた穴に比較的柔らかい金属(錫など)を入れくっつけます。金属を押し込むと柔らかいため先端が丸まり抜けなくなるそうです。本来、鎹(かすがい)直しは接着材などは使用していないので、鎹(かすがい)を外すとバラバラになってしまいます。
丈夫な修復方法
日本でも、100年ぐらい前までは街中で職人が鎹(かすがい)直しを行っていたと聞きます。土を入れたりする植木鉢などは、負荷が大きいので丈夫な鎹(かすがい)直しを好む方もいるそうです。
今この修復をする方は珍しいようです。
弊社修復士も請け負っていません。
お問い合わせのお客さまのアンティーク皿がどこで修復されたかはわかりませんが、割れてもなお鎹(かすがい)直しをして大事に使われていたお皿だったのでしょう。物語のあるお皿です。大切にしていただきたいですね。
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