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根付 日本の凝縮された美の象徴 ― 精巧な工芸品

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根付とはなんですか?

根付についてですが日本には、今なお世界を驚かせる美術品として、浮世絵、漆器(蒔絵)、刀剣など、日本独自の技術が発展した古美術品が数多く存在します。今回紹介する「根付」もその一つで、特に海外のコレクターに非常に人気が高いことで知られています。実際、根付の協会のメンバーを見ると、半数近くが海外からのコレクターや愛好家だという話も耳にします。では、なぜこの根付が世界中の人々を魅了しているのでしょうか?

根付の起源

まず、根付の起源について簡単に説明します。江戸時代、日本の人々は和装をしており、腰巻きに巾着、印籠、煙草入れ、矢立などを携えていました。これらの小物を「提物(さげもの)」と呼びましたが、これらが落ちないように、紐の先に結びつけられたのが「根付」です。初期の根付は、木片や簡素な素材で作られており、腰に吊るしていたとされています。例えば、桃山時代の歌舞伎図には、象牙の輪を帯に通して提物を吊るしている女性が描かれています。

その後、根付が現在の精巧な形へと進化したのは、江戸時代中期のことだと言われています。この時期には、喫煙の習慣が一般に広まり、煙草の葉を携帯するための革製の煙草入(胴乱)や木製の煙草入(トンコツ)が普及しました。また、武士階級では参勤交代制度の影響で、薬を入れるための印籠が必需品となりました。これにより、提物は日常的に使われるようになり、さまざまな細工や装飾が施されるようになりました。

こうした中で、提物を吊るすための「根付」にも装飾が施され、ただのストラップとしての機能を超え、芸術作品としての価値が生まれました。様々な意匠や素材が取り入れられ、根付そのものが個性や美しさを表現するアイテムとして楽しまれるようになったのです。

根付はどうやって出来るのですか?

さて、この小さな提物のストラップである根付は、どのように作られているのでしょうか?根付の素材は多様で、木(柘植)、象牙、角、金属、焼物、猪の牙、貝、漆を重ねた堆漆などが使われます。特に、木や象牙、角を使用したものがよく見られます。今回は、象牙を素材に使用し、簡単な制作工程をご紹介します。

根付制作【型取り】

最初に、象牙の素材から適切な大きさの塊を取り出します。象牙の先端は詰まっているのに対し、根元部分は空洞が多いため、詰まった部分を輪切りにしてさらに分割し、素材とします。

根付制作【墨付け・墨入れ】

型取りした素材に墨で構図を描く工程です。ここで全体の形が決まります。

根付制作【荒突き・粗彫り】

大まかな形を作る工程です。鋸や鑿を使って墨の構図に従い、素材を削っていきます。

根付制作【小突き・細部の彫り】

次に、細部を彫る工程です。細い鑿や彫刻刀を使って、細かいディテールまで彫り込みます。象牙は粘りがあり彫りやすい素材とされています。

根付制作【削り・仕上げ彫り・表面のならし】

数十種類の彫刻刀を駆使し、表面を平らにならし、根付の紐通し部分などの細部の仕上げを行います。作者の銘もこの段階で彫り入れます。

根付制作【磨き】

ここでは、彫刻刀による細かい傷を消し、艶を出す工程です。木賊(とくさ)や鹿角の粉末を使用して磨き上げます。

根付制作【模様彫り・毛彫り】

細かい模様や、髪の毛、動物の毛、鳥の羽などの彫り込みを行います。針状の毛彫り刀を使います。

根付制作【染め・着色】

自然の素材、夜叉五倍子(やしゃぶし)や梔子(くちなし)の実を使って煮汁に浸け、素材を染めます。

根付制作【彩色・艶出し】

墨や顔料で色を付け、絹布などでこすりながら艶を出します。

根付の制作には、数ヶ月から半年以上かかることもあります。丁寧に作り上げられた一つ一つの根付には、製作者の情熱と技術が込められており、見る人を感動させる作品です。

当社の根付作品を紹介

当店で取り扱っている根付の一部をご紹介いたします。職人の技が光る精緻な彫刻や、美しい素材を使用した作品の数々をぜひご覧ください。各根付には、それぞれの素材の魅力や細部にまでこだわったデザインが施されています。

下記に、一部の根付の写真をご用意いたしましたので、どうぞご覧ください。
根付の持つ独自の魅力を、お楽しみいただければ幸いです。

他の根付の紹介と書籍を紹介

少しご紹介しましたが、当社では他にも提物に関連する商品を多数取り揃えております。ぜひ一度ご覧ください。 こちらです

古美術名品「集」第33号でも、この根付について特集をしております。根付の歴史や美術的価値について詳しく紹介されていますので、ご興味がございましたら、ぜひご覧ください。古美術名品「集」第33号

根付の蒐集で有名な高円宮殿下のコレクション

根付蒐集家としても知られていた故高円宮殿下が、妃殿下とともに蒐集された現代の根付師による作品が、現在、東京国立博物館で展示されています。これらの作品は、伝統的な技法を継承しつつ、現代の感性や創意工夫が加わったものばかりで、非常にユニークで魅力的です。 東京国立博物館ページ

根付の魅力をさらに深く知るために

簡単な根付の起源と制作工程についてご紹介させていただきましたが、楽しんでいただけましたでしょうか?根付は、長い歴史と職人の技術が詰まった美しい工芸品です。今回のご紹介を通じて、少しでもその魅力を感じていただけたなら幸いです。

今後も、根付の歴史に関する第二弾や、珍しい素材を使用した根付など、さまざまな角度から根付の魅力をお伝えしてまいりたいと思います。これからも、皆様と一緒に根付の素晴らしさに触れる機会を提供できればと思います。どうぞご期待ください。

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