香りの名脇役 香炉
バラの花の香り、美味しそうな蒲焼きの臭いなど好きな匂いには心が和みます。香りの世界は不思議がいっぱい!です。
侮れません!臭い!匂い!
臭いが分からなくなる嗅覚障害(無臭症)は恐ろしい病気です。
嗅覚障害者は日常から色が無くなるような味気なさと、危険な臭いを察知できなくなるという恐怖を併せ持つことになります。
好きな匂いもイヤな臭いも生きて行くうえで必要です。
皆さん、お鼻を大事にしましょう!女王クレオパトラの鼻の高さを気にするより機能性が大事です。
お香の伝来と広まり
香が伝来した当時は、お線香としての仏具でした。
御仏や菩薩に香りを供するもので「香炉、花瓶、燭台」を一組とした「三具足(みつぐそく)」が誕生しました。
後に三具足は仏間を離れ座敷飾りとして上流社会に広まりました。
平安時代には寺社以外でも香りを楽しむ風習が広まりました。
香木は輸入品のみで高額でしたが、貴族社会において部屋でたいたり衣服や髪にたきしめたりしました。「わーっ、贅沢三昧!」と言いたいところですが、当時は風呂が行き渡っていないので上流社会といえども皆さん汗とか、垢などの臭いがするのは普通だったかも知れません。しかも現代のような石鹸やシャンプーなんてなかったのです。清潔が当たり前の現代人なら相手が美人、美男といえども臭いは御勘弁!鼻をつまんで恋どころではないでしょう。でも光源氏の男臭さは許されるかもしれませんね。「嗅いでみたーイ!」かな?
そんなわけで裕福な貴族社会では悪臭を良い香りで覆い隠そうと「移り香」をメインに贅沢なお香文化が発展しました。
室町時代に茶道、華道とともにはじまった香道
日本には「香道」という奥ゆかしい文化があります。
精神を清らかにするという芸道です。
ほのかに燻らせる香りを聞くこと(香道では香を嗅ぐとは言わず、香を聞くといいます。)を目的としています。
雅の世界に浸りつつゲーム感覚の楽しさが現代に続いてきた由縁でしょう。
機会があったらチャレンジしてみてください。
香を楽しむには香炉が必要です。
香りの主役はお香です。
しかし香を聞くには香炉が必ず必要です。
脇役の香炉ですが、美術的に姿形が良いと立派な主役になります。
香炉と聞いて思い浮かぶのは中国渡来の青磁香炉ではないでしょうか?
時代劇で床の間や書院棚に飾られています。
香炉の形
香炉の形には鳥、動物、植物、建物等が多く見られ、材質では陶磁器、漆器、象牙、金属、石、等があります。
骨董舎店内には小振りの香炉が飾られ、広い部屋用の鞠型「振り香炉」や「吊り香炉」の鶴(唐金製)がゆったりと舞っているのが見られます。
見たてで楽しむ香炉
手軽にお香を焚くならどんな容器でもいいと思います。
骨董舎では古唐津の陶片に香立てを置いたり、古伊万里の蕎麦猪口を香炉に見立てたりして楽しんでいます。チョっとした侘び寂が感じられるのは古い物が醸し出す雰囲気でしょう。
香木の香をたく
火を付けて簡単に香るお香も良いですが、たまには丁寧に香木の香りを楽しんでみてはどうでしょうか。
香炉の中に香炉灰を入れます。
乾燥させた灰を8~9分目ほど入れ、よくおこした香炭団(こうたどん)を灰に埋め込み、銀葉(ぎんよう)を乗せて香を置きます。
灰から伝わる熱で香りがほのかにたちます。
決して香片をボーボーと燃やさないでくださいね!
香炉灰の種類
◆天然木を燃やした灰
藁灰や菱灰、藤灰、桐灰があります。
灰が柔らかいので線香を立てた場合立て方が浅いと倒れやすいです。長所は下の部分まである程度燃えるので燃え残りが少ないことです。
◆珪藻土灰、珪砂、鉱物の石英等や天然石の粒、金属を粉末状にした灰
藁灰より堅いのでお線香が倒れにくいのですが灰に挿した部分が燃えにくいのでカスが残ります。
◆ガラスビーズ(クリスタル)灰
キラキラのガラスビーズでローズ、黄、ブルー、紫色とカラフルです。
見た目が美しく衛生的で何度でも洗って使えるのが特徴です。
香炉もガラスだと見た目に綺麗でしょうね。虹色に配色してはいかが?
お香の種類
◇お線香(スティックタイプ)
長さで燃焼時間の調整が出来ます。室内用、仏事用ともに種類が豊富です。火口が決まっているので均一に燃え、一定の香りが広がります。
◇円錐型(コーンタイプ)
トップの火が下に燃えていくと面積が広がるため香りが次第に強くなります。倒れにくく灰がその形で燃え残るためポイッと捨てられます。
◇渦巻き型
蚊取り線香のように平に渦を巻いています。長時間燃焼しますが途中で消したいときは部分でペキッと折れば大丈夫です。
◇香木(切片)
伽羅(きゃら)・羅国(らこく)・真那蛮(まなばん)・真那伽(まなか)・佐曾羅(さそら)・寸聞多羅(すもたら)など香りの高い樹脂や樹木を削り使用します。香道はこれらを組み合わせて使います。
◇抹香
香木を細かく粉砕し、主に焼香の時に使います。
◇塗香(ずこう)
インドの暑い気候の中で身体の清潔感や清涼感をだすために、手や身体にパウダー状にした香を塗ることが発案されました。最も細かい香で炷かずに用います。主に密教寺院で読経や写経の前に手や体に塗り心身を清めるのに使用します。
◇座禅香
線香の長いもので座禅堂や法事の時の導師用に使います。線香に目盛りが刻まれた物もあります。
◇印香
線香を板状にのばし、着色された小さめの花や葉、紅葉に型抜きして乾燥させた物です。見た目、可愛いです。
◇掛香
お香を小さな布袋に入れて持ち歩いたり、出入り口に掛けたり、衣服の引き出しに入れ移り香を楽しみます。
香りにはアロマテラピー(芳香療法)と同じく心身のリラックスや活力を引き出してくれる成分が含まれています。
モダンなお部屋にも骨董の香炉はマッチします。
さり気なく飾るのが大人の素敵さでしょう。
お香を数種類揃えておけば気分一新ができます。
ところで1975年に発売された小椋佳作詞作曲「シクラメンのかほり」ですが、当時のシクラメンには香りはありませんでした。どんな香りなのかナーと気になった歌詞でしたが近年「芳香シクラメン」が登場したそうです。数種類あるらしく上品な香りらしいですよ。花屋さんで出会えたらラッキー!! 私、即買いします。
最後までお読み頂きありがとうございました。
#骨董舎のお留守番でした。
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