日本人に長く愛でられてきた韓国の焼物が奏でる魅力とは?
古美術品と言えば陶磁器・木工品・工芸品・茶道具・古書画・絵画・金工品・仏教美術・etc…ジャンルは様々で、
興味を持ち始めるときりがないかもしれません。
先日、御来店頂いた焼物コレクターの方と骨董談義をしていたのですが、
面白いもので古陶磁関係のコレクションをされている方は共通して
伊万里から始まり→六古窯に興味をもち→最終的に朝鮮の焼物に到達する
という蒐集歴が多いというのです。
実際に私自身も同様に伊万里から始まり、
いつの頃から朝鮮の焼物に興味と愛着を感じる様になっていて
私の店舗にも多数の高麗・李朝の焼物や家具が鎮座しています。
しかしなぜ、日本人は朝鮮の焼物の味わいに魅了されていくのでしょうか?
骨董・古美術の初心者の方からすれば、一見伊万里焼と大差なく見えると思いますが私なりに紐解いて見たいと思います。
そもそも韓国の焼物はいつから始まったのか?
韓国の焼物の名称として李朝・高麗と呼び区分けしているのをよく聞きますが、実は韓国の焼物の歴史も古く日本と同様紀元前に土器が始まりとされています。名称は櫛目文土器と呼ばれる土器で当時は世界的(ユーラシア大陸)に広く分布されていてとてもポピュラーな焼物だった様です。
また、時代を経ると日本の弥生土器の様なスタイルの物も登場して来るのです。紀元後になると中国より轆轤(ろくろ)成形の文化が伝わってきて日本の須恵器の様な土器が高句麗・新羅・百済などで作られ始めます。
土器から陶磁器への変化
また時代は流れ高麗時代(918年 – 1391年)に韓国は中国からの侵略を受けていましたが、この頃に中国文化の影響も受けていた為、焼物も中国の手法を韓国で製作する様なりました。
冒頭で申し上げた李朝・高麗の高麗がこの頃の物を差すのですが高麗時代の焼物の特長として繊細な作りの青磁・白磁が登場したことが大きな変化の一つになりました。
高麗時代も太祖・李成桂により終わりを告げて朝鮮時代(李氏朝鮮・李朝)(1392~1910)を迎えることになるのですが、この時に高麗青磁に象嵌を施した粉青(三嶋手)や刷毛目・粉引き・渓流山と言った大胆な絵付けや技法を駆使した焼物が登場するのです。
また、15世紀になると白磁や白磁にコバルトで絵付けをされた青華と呼ばれる焼物が官窯で製作される様になり、地方の窯にも16世紀頃には焼かれ始めます。しかししばらくするとコバルトが入手困難になってしまい、コバルトに変わる鉄絵具を使った物が登場してきました。
朝鮮も時代や文化・王朝の影響を受け焼物も様々な変化をしてきたのですね。
どの様にして日本に伝わってきたのか?
さて、この高麗・李朝の焼物達は何故日本人で人気になったのでしょう?
作られていた当時は一般的な食器として生産された実用品でした。そのため、今では根強い人気の韓国の陶磁器ですが明治時代ぐらいまでは日本にもあまり馴染みのない物だった様です。
そんな韓国の焼物を一躍有名に引き上げることになった人物は、朝鮮古陶磁研究者である浅川伯教(1884年 〜 1964年)とその弟・浅川巧の浅川兄弟です。
用の美、日常生活の道具の中にこそ美はあると提唱した民藝運動を広めた柳宗悦に韓国の焼物を紹介し、日本に広めた事がきっかけになっているのです。
もちろんこの後も韓国に渡り様々な窯を研究発掘した様で、柳宗悦と共に朝鮮民族美術館を開館し、のちに韓国の焼物についての著書を日本で発行しました。そんな浅川兄弟の功績を称え出身地である山梨では浅川伯教・功兄弟資料館が2001年に作られたほどでした。
余談ですが、浅川巧の半生を描いた映画「道〜白磁の人〜」が2012年に吉沢悠主演で上映されています。骨董愛好家のみならず楽しめる作品だと思います。
韓国の焼物の魅力とは??
火付け役として浅川兄弟・柳宗悦などが民藝運動を行い日本にも韓国の陶磁器が広まりましたが、なぜ韓国の焼物が日本人の感覚を魅了し、不動の人気を現代にも持ち続けられているのでしょうか?
私が思うにその魅力は、韓国の生活から生まれた実用美のある素朴なフォルム、大胆で遊び心が感じられる絵付けや、浅川伯教が感動したという李朝ならでは白い肌の白磁ではないでしょうか。また素朴な品物だけではなく高麗象嵌や分院手の繊細な作りの中にある品格もこれまた魅力の一つです。
日本の茶人に愛された刷毛目や粉引き・御所丸・井戸と言った茶碗達も様々な技法を駆使して作られ、素朴さと豪快さ・繊細さを楽しめ飽きのこない魅力を持っているのでしょう。
製品なので意図して作り上げるものかもしれませんが、この焼物達にはその意図的な堅さとは程遠い柔らかさや温かみ・素朴な感じにどこか親近感を感じるからかもしれません。
韓国の焼物をコレクションしている方も、この記事を見て初めて知る方も実際に品物を眺めたり手に取ったりして魅力を感じてみてはいかがでしょうか?