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七宝焼 艶やかな彩色の美

七宝作品の魅力は、色数の多さ、美しいなめらかな光沢にあると思います。しかもその輝きは時間によって劣化することがほとんどありません。女性にとってうらやましい限りです。

七宝の語源は、仏教の経典にある「七つの宝物」

  • 瑠璃(るり)(アフガニスタン産ラピスラズリ)
  • 玻璃(はり)(無色あるいは白色水晶/ガラス)
  • 硨磲(しやこ)(シャコ貝・白色系サンゴ)
  • 瑪瑙(めのう)
  • 珊瑚(さんご)/真珠/玫瑰(まいかい=赤色系の宝玉)

(経典により諸説有り)

浄土信仰では、極楽浄土は七宝荘厳(しつぽうしようごん)、つまり七つの宝で飾られた美しい世界であると説かれています。不思議にも現在高額のダイヤモンド、エメラルド、サファイアなどは登場していませんね。現在とは価値観が違ったのか?未発見の産物だったのか?磨きの技術が稚拙だったので美しさが知られていなかったのか?

七宝焼とは?

西洋ではエマイユ、ペイント・エナメル、クロワゾネ・エナメルなどの呼び名があります。

七宝焼とは、鉄、金、銀、銅などの金属素地にガラス質の釉薬を盛って750~950℃で焼き付けて装飾した工芸品のことです。表面の溶けた釉薬がガラス質またはエナメル質の美しい色彩で表現されました。

また、鉄に釉薬を施したものを琺瑯(ほうろう)と呼びます。琺瑯は生活雑器としてカラフルに鍋にカップ、やかんなど日常品に多く取り入れられてきました。探してみれば意外な所で見つかるかも知れませんね。

七宝焼の日本上陸

日本には中近東を振り出しにシルクロードを経て中国から伝わりました。またもお馴染みの伝来ルートで到着。「七宝、おまえもか!」とつい言いたくなります。

【余談ですが、高橋留美子原作の漫画作品『 犬夜叉』に登場する七宝(しっぽう)という子狐妖怪、めちゃ可愛くて私、好きでした。『うる星やつら』の登場人物。鬼族の幼児テンちゃんと似ているキャラです。この話、ご存じの方とじっくりお話したいのですが余談なのでいつの日か又の機会に】

さて、伝来は6~7世紀とされています。実際には泥七宝という技法の七宝焼が主流でしたが、江戸時代に七宝師が全国各地に登場し、刀の鐔や鞘の装飾、神社仏閣の釘かくしなどを製作しました。
中でも有名なのが平田 道仁(ひらた どうにん)です。平田 道仁(ひらた どうにん)は、安土桃山時代から江戸前期にかけての金工師、七宝師で道仁以降、平田一派は七宝師としておおむね一子相伝で大正時代まで続きました。

【2つめの余談です。
2019年 第66回伝統工芸展、高松宮記念賞「律」 河田貴保子 作 が泥七宝です。渋い色合いの中に気品が満ちています 】

世界を驚かせた日本の七宝焼

明治時代、七宝焼が日本の美として西洋諸国に満開の花を咲かせました。明治維新で膨大な国費が無くなり、政府は大慌てで各種の工芸品の輸出をもくろみパリ万国博に出品しました。

とりわけ七宝焼の作品は目を見張る美しさで他を圧倒し、欧米の人たちを驚愕させ、なおかつ喝采を浴びました。

人気を博した七宝は非常に高い値段で取り引きされました。ゆえに、日本の七宝の頂点とされる明治時代の作品は輸出用に作られたため、名品のほとんどが海外にあります。残念ですよね!

清水三年坂美術館の村田理如館長は明治の超絶技巧が日本より海外に多いのを嘆き、それらの買い戻しを必死に頑張ってくださっています。おかげで明治の超絶技巧の作品を少しは日本で見られるわけです。

七宝界に花咲く東西の【ナミカワ】

政府の要請に答えた七宝師達の頂点に立ったのが二人の「ナミカワ」でした。七宝界で超有名な二人、覚えて下さいね、試験に出ますよ!!

〇濤川 惣助(なみかわ そうすけ、弘化4年(1847年)〜 明治43年(1910年)東京を中心にして活躍。東京で活動し無線七宝を得意とする。機械式の置時計の傑作として有名な万年自鳴鐘の七宝台座を制作しました。また、赤阪迎賓館の花鳥の間の壁面を飾る『七宝花鳥図三十額』は国宝の一部になっています。

〇並河 靖之(なみかわ やすゆき、弘化2年(1845年) 〜 昭和 2年(1927年)京都を中心に活躍。近代七宝の原点である有線七宝にこだわり続けてこれを極めました。並河靖之が発明したものとして特に有名なのが、黒色透明釉薬です。黒色透明釉は神秘的な漆黒であり、透明感が奥行きを出しています。皇室ご用命の帝室技芸員を務めたのも当然と言えます。

明治の超絶技巧の二人のナミカワ作品は本当に見事です。機会があったらぜひ、記念館や美術館で作品をご覧になってください。
並河靖之七宝記念館

気軽に楽しめる七宝工芸品

日本の七宝工芸品の質の高さは追従を許しません。現在では手に入りやすい小品がたくさん出回っています…ブローチ等のアクセサリー、食器、額絵、万年筆、小物入れ、花器、ケース、etc.………

気がつけばいろいろな所に七宝が色彩の美として散りばめられています。
私も柄の部分に小さな七宝飾りのティースプーンを長年使っています。6本全部、花の絵と色が違うのでその日の気分で選びます。
四角の銘々皿は銀の打ち出しにピンクのカトレア、葉のグリーンがキラッときれいです。載せたお菓子がものすごく高級感が出て美味しそうに見えるのです。一人ニンマリしています。

あなたも七宝の彩りを生活にプラスして、暮らしを楽しんで見ませんか?

以上 #骨董舎のお留守番でした。

 

オンラインショップで七宝焼をたくさん紹介しています。ぜひご覧下さい。
http://antiques-store.com/category/item/yaki/jtk

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