骨董会館 倉賀野店

武人の思いが込められた馬具、「鐙(あぶみ)」

5月5日は端午の節句。
この時期に自生する菖蒲には魔除けの効果があるとされ、さらに葉の形が剣に似ていること、「尚武(武道・武勇を重んじること)」と同音であることから、男の子の成長を祝って健康を祈る日という風習が広まりました。

今回は端午の節句にちなんで、武具の中から鐙をご紹介します。

「鐙」とは?

馬具の一種である鐙は、馬の背中に付けた鞍から提げる、馬の乗り降りの際と、乗馬中の足を置くための道具です。
元々は中国から伝来してきた文化とされています。初期はここまで凝った形ではなく、ロープの先を輪っか状にしたものを使用していたようで、それが日本の文化の中で独自の進化を遂げ、この鐙の形状へと変わっていきました。

鐙の数々(骨董会館 倉賀野店にて販売)

銀象嵌で南天のような植物、裏には流水紋が描かれています。
南天はその名前から「難を転じること」に通じ、流水には苦難・災厄を流す、という意味が込められています。
「金沢住勝尾永次作」の銘があります。

こちらは牡丹の花に流水紋。牡丹の周りには邪気を払うとされる星形が取り込まれた籠目文様が描かれています。牡丹の「丹」の字には不老不死の薬の意味があるため、そういった思いも込められているのでしょう。
「政幸作」の銘があります。

正面一杯に孔雀が羽を広げた姿が描かれています。
孔雀は「地球上に存在する鳳凰」とされており、その神々しい姿から不老不死の意味があるようです。牡丹の花、流水紋なども描かれ、めでたいもの尽くしの図です。
銘はありますが、潰れてしまい、不明です。

こちらは花唐草の中に家紋が入れ込まれた図。
裏にも唐草があることから、一族の繁栄という願いが込められているようです。
銘はありませんが、丁寧かつ繊細な象嵌が施されています。

用途だけを考えればただ足を乗せるだけの道具ですが、やはり戦いの中でこうした細かな道具にも一つ一つ縁起を担ぐことで、軍の士気を高めていたのでしょう。
武士としての美学を垣間見たような気持ちになりますね。

◎古好屋 
HP http://antiques-store.com/
営業時間 10:00〜18:30 火曜定休
電話 090-2660-8011
Mail kottosya@shunet.co.jp

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