彫漆の美《音丸耕堂 音丸淳》
何事もスピード化に慣れた私たちにとって、すごく気の遠くなるお話をしますね。主役は漆。その漆技法の一つに「彫漆・ちょうしつ」があります。
彫漆は中国から仏教伝来と共に伝わった技法で、香炉・香盆・香合などの表面装飾として渡来しました。
彫漆は色漆の厚い層を鋭利な彫刻刀で彫り込み模様を表す技法のことです。手順は完成図を基に、色漆を器物の表面(土台)に下から順に数十回から数百回(100回で厚さ約3㎜)も塗っては乾かす工程を繰り返します。さて、何十日かかるでしょうか?この辺で普通の人は気が遠くなります。漆が乾いたら彫刻刀で完成模様に彫り込み目的の色、形を彫り出します。
古来の彫漆
昔の漆の色は朱、黒、黄、緑、褐色などでした。堆朱(ついしゅ)は朱漆を塗重ねて彫りあげた朱漆一色の仕上がりです。
黒漆で仕上げた堆黒(ついこく)、黄色の漆仕上げの堆黄(ついおう)、緑色、褐色等のものがあります。
彫漆の魅力
立体的な彫りと色漆の彩りが魅力です。明治になってチタニウムの白漆が開発され、白色の顔料と他の色を染めたレーキ顔料により、青や紫、ベージュなど中間色も自由に出せるようになりました。漆の色彩表現領域が格段と広がり、鮮やかな色漆の世界が出現しました。
作品も大きさに比例して時間を必要とします。彫漆作家は粘り強い精神とド根性を併せ持っていないと出来ません。慌てん坊の私はひたすら尊敬し頭を垂れるのみです!
では彫漆で名高い親子をご紹介します。
【音丸耕堂 おとまるこうどう】
音丸耕堂 明治31(1898-1997)
香川県高松市に生まれました。13歳で石井磬堂(けいどう)に木彫、彫漆(ちょうしつ)の技術を習得、16歳で独立。20歳のとき江戸時代末期に活躍した玉楮象谷(たまかじぞうこく)の作品を私淑し彫漆技術を身につけました。
斬新なデザインや色漆の効果を活かし作品に表しました。昭和55年に漆芸家では初の重要無形文化財(人間国宝)保持者に認定されました。
【音丸淳 おとまるじゅん】
【音丸淳】昭和4年(1929〜2005)
香川県高松市に音丸耕堂の三男として生まれ、東京美術学校工芸科を卒業。松田権六や父の音丸耕堂に師事。その後イタリアに留学。新たな感覚を漆芸界に吹き込みました。日本伝統工芸展連続30回入選、1988年には紫綬褒章受章を授与されました。
作風は日本独自の伝統と世界的な感覚を融合させた洗練かつ大胆なデザインと色彩が特徴です。
ブログで紹介した音丸耕堂・淳の作品は、骨董舎で販売しております。
是非、気の遠くなるような技術の高さをご覧下さい。
ご来店お待ちしております。
#骨董舎のお留守番でした。