骨董の文様〜神の使い・龍
龍(りゅう)は中国から伝わった伝説上の生き物です。西洋のドラゴンと違い神の使いとして敬われてきました。
日本では吉祥文として家紋、衣服や器物文様として描かれてきました。
子供の日の「鯉のぼり」は中国の大河、黄河に「龍文」と呼ばれる急流があり、鯉がこの急流を登りきるとご褒美として龍に成ると伝えられたお話から、日本では子供の成長を願い、鯉のぼりを流しました。立身出世を表す「登竜門」の言葉もここから生まれました。
龍は水中や地中に住み、天空を飛び、雲や雨、風、雷を起こし、竜巻、稲妻を自在に操る霊(神)獣として崇められています。多くの龍は西洋のドラゴンのように翼はありませんが飛べます。翼を持った飛龍もいますけど。
龍は生き物の最強合体
頭には鹿の角、口元には長いひげを生やし、胴体は蛇、背は81枚の硬い鱗で覆われています。実在する生き物8体と、1つの蜃(蜃気楼のもとといわれるハマグリ)の部分を合体して出来上がりました。
1 頭…駱駝(らくだ)
2 角…鹿(しか)
3 目…兎(うさぎ)
4 耳…牛(うし)
5 胴体…蛇(へび)
6 腹…蜃(しん=想像上の巨大ハマグリ)
7 うろこ…鯉(こい)
8 手のひら…虎(とら)
9 爪…鷹(たか)
龍のプロフィール
夢のインタビューより
*年齢 中国では紀元前17世紀以降、日本では弥生時代に登場(弥生龍)(実年齢は若ぶって教えてくれない)
*家族 青龍、白龍、黒龍、赤龍(タツの落とし子は他人のそら似)
*住まい 本宅:海の底(竜宮城) 別荘:天地、地中、湖、沼
*好きなこと 宝珠取りっこ合戦、富士山越えタイム競争
*嫌いなこと 神様のお小言(雨乞いで夢中になりすぎ河川を氾濫させて神様に叱られること多し)
*特技 雨、風、雷を自在に操れる
*課題 西洋ドラゴンとどう付き合うか
*夢 宇宙を飛び回ってみたい(まだ地球の引力に負けている)
*希望 酸性雨、プラスティックゴミ(マイクロビーズ)はお肌が荒れるので困る、何とかして欲しい!との切なる要求でした。
龍にも身分の差があった?!
龍にも階級があり、①「龍」、②「蛟(みずち)」、③「応(おう)蜃」、④「蚪(と)」、⑤「璃(ち)・蟠(ばん)」の順で五段階に分類され、天に近づくほど髙位で神通力にも差があります。
意匠として人気のあった龍は、中国では使用者によって描かれる龍の爪の数が違います。5本爪は皇帝、4本爪は貴族、3本爪は庶民が使うものとされていました。
日本では龍による身分の差はなく、自由に図柄を楽しみました。
だからこそ、そば猪口などに面白い龍一族がたくさん生まれたのですね。自由バンザーイ!! 平等バンザーイ!!
神話や伝説にもたびたび登場する龍
【四龍】四龍とは「蒼(青)龍」、「紅(赤)龍」、「白龍」、「黒龍」のことをいいます。他に「黄龍(神の精)」、「応龍(四龍の長)」がおり、黄龍は東西南北の中心を守ると言われています。これも出典により違いがありますが、黄龍と応龍が同一視されることも多いようです。
【瑞獣の四霊】四霊とはこの世に住む動物たちの頂点に君臨し、吉兆を知らせる霊獣のことです。龍(変幻)、鳳凰(平安)、麒麟(信義)、霊亀(吉兆)とともに四霊の一つです。
【方角の神】天の四方を司る神として四方位にそれぞれ瑞獣が位置し悪霊から守っています。青龍=東(春)、朱雀(鳳凰)=南(夏)、白虎=西(秋)、玄武(霊亀)=北(冬)、黄龍や麒麟=中央(土用)
意匠・文様としての龍〜龍と雨龍
文様にあらわれる龍は大きく分けて二種類あり、単に「龍」と呼ばれる普通の姿のものと、簡素化された「雨龍」とに大別されます。
「雨龍」は頭部が大きく体は細い線書きで描かれ、単純化した漫画的なやさしいイメージの龍です。私はアニメ大好き人間、雨龍派です。
「龍模様」の多くは円形で構成された丸龍、巻龍、角龍、升龍、菱形や馬蹄形、窓枠龍文、向き合った双龍文などがあります。
寺紋が雨龍の寺院もあります
【天龍寺 】京都府京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町にあり、臨済宗天龍寺派大本山の寺院。「古都京都の文化財」のひとつとして世界遺産にも登録されています。山号は霊亀山天龍資聖禅寺と称し、本尊は釈迦如来、開基は足利尊氏、開山は夢窓疎石です。
【南禅寺】京都市左京区南禅寺福地町にあり、臨済宗南禅寺派大本山の寺院です。山号は瑞龍山、寺号は太平興国南禅寺で、本尊は釈迦如来、開基は亀山法皇、開山は無関普門。日本最初の勅願禅寺です。
参考図書
龍の文様がたくさん掲載されている本を紹介します。
焼物好きな私の愛蔵本の1冊です。
「面白龍文 そば猪口・のぞき・湯呑」内藤 勝雄・著 里文出版
ユニークな龍ご一族様がいっぱい見られますよ。
骨董舎のお留守番より