アンティークのある暮らし

アンティーク・骨董品を日常生活に活かす飾り方、使い方の提案

茶箱で楽しむお抹茶時間

突然ですが、茶箱って知っていますか?

昔、茶葉を入れていた大きな箱ではなく、茶道で使われる20㎝ほどの長方形の箱で、お茶を点てる道具が一式収まった携帯用のお茶道具セットです。

茶箱の歴史は古く、千利休が大善寺山で野がけの茶会で尻膨(しりふくら)の茶入を茶箱に入れて用いたと「南方録」にあるのがはじまりとされています。
野外でお茶を楽しむ野点に使ったり、旅先に持っていったりお茶道具一式をいれて持ち運んでいたようです。

現在でも、茶箱を使った点前(抹茶を点てる作法)があります。

私、この点前がとっても好きなんです。
なぜか…。

なんといってもお道具が小さくて可愛らしい。

茶箱点前は、すごくよく考えられていて、茶箱の中の道具を全部出してお茶を点て、また茶箱の中に道具をきちんと仕舞うまでがお点前になっているのですが、20㎝ほどの箱の中にパズルのように道具が順序よく仕舞われていく。その様は感動さえ覚えます。

茶箱の特徴的な道具 振出(ふりだし)

茶箱に必ず入っている振出。こんぺいとうなど干菓子を入れます。
野外で使う物なので、口が小さく倒れにくい形をしています。陶磁器、ガラス製など素材はさまざま。

道具の見立は茶人の見せどころ

茶箱や茶箱に入れる道具は、セットで購入することも可能ですが、
1つずつ気に入った道具を集める楽しさもあります。

また、茶道具全般に言えることですが、見立(本来の用途ではない使い方)で道具合わせをすることも良しとされています。

千利休も漁師のびくを取り上げて、花篭に使ったり、自身で竹花入れを作るなど、見立を好みました。

茶箱の道具も、化粧品を入れた蒔絵の蓋物を棗に見立てたり、細身ののぞきを茶巾筒に見立てたり。道具の取り合わせは茶人の腕の見せ所、センスと知識を試されます。茶席に招かれる客の、楽しみの一つです。

見立の道具たち

萩焼の茶巾筒(右)と染付のぞき(左)。中国茶の聞香杯でも茶巾筒として代用できそうです。

現代の大棗(左奥)と時代物の化粧道具を入れた蓋物(手前と右奥)。

日々の暮らしに取り入れる茶箱

合理的な上に美しい茶箱の使い方は、日常生活の中でも取り入れることができるのではないでしょうか。

旅行先で土地のお菓子とともにお抹茶を

竹籠に茶碗と棗、茶筅、茶杓が入った簡単なセットですが、旅行先でちょっと一服。その土地のお菓子と一緒に楽しむ贅沢な時間。旅の想い出になりそうです。

自宅での収納は籠に入れて

これを茶箱と言っていいのか…。多少強引ですが、自宅で簡単にお抹茶を楽しむ際に、抹茶碗、棗、茶杓、茶筅、茶巾など使うものを竹籠や木箱に入れておくと思いついた時にすぐ点てられます。他の食器類と混じらないので、傷が付く心配もなくおすすめです。麻や綿の布をホコリよけと緩衝材がわりにしています。

最近では紙製の茶箱も販売されているようです。
ぐんと茶道が身近に感じられます。

アウトドアで抹茶を点てる

この写真は、骨董舎のお客様からお寄せいただいたものです。ご友人と赤城山登山に行った際、山頂で撮影してくださった1枚です。備前の飯碗をリュックに詰めて登り、景色をみながら点てた抹茶は至福の一杯だったそうです。

久しぶりの登山も、山頂でお抹茶が待っていると思うと足取りも軽かったとお話を伺いました。好きな器を持って出かけ、お茶を楽しむ。1人でも仲間どうしでもそんな何気ない時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。

今回のコロナ禍でおうち時間を楽しむことが注目されました。
茶道の流派や作法にとらわれず、丁寧に点てた抹茶を美味しい和菓子といただく。そんな時間と気持ちの余裕を持ちたいですね。

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