「百花の王 牡丹(ぼたん)」
たくさんの花が描かれる百花繚乱図に必ず描かれるのが「牡丹」です。
その豪華な花姿から、古美術品の意匠や能・歌舞伎の題材にも取り上げられる「牡丹」について書きたいと思います。
牡丹はどんな花?
牡丹は、落葉低木で1本の木に10~20cmほどある大輪の花を沢山咲かせます。開花期は本州なら4~6月頃です。(春のお彼岸に食べるぼた餅は「牡丹餅」から来ています。人生も「棚からぼた餅」式にいけば楽チンなのですが…)
牡丹と芍薬の違いは?
牡丹に似た花に芍薬がありますが、芍薬は多年草で一本の茎が地上に伸び一つの花を咲かせます。どちらも薬草です。簡単な見分け方は、牡丹は木、芍薬は草ということでしょうか。
牡丹には香りはなく、芍薬はほのかな香りがします。そして現代、いいとこ取りで生まれたのが「牡丹と芍薬のハイブリッド種」。香り以外にも一重に八重、千重咲き、万重咲きと多様です。色も白、赤、黒、紫、黄、ピンク、ミックスと多彩です。ちなみに中国や日本では牡丹と芍薬は区別していますが、欧米では区別なくひっくるめの英語名で[peonyピーオニー]。大らかなお国柄ですね。
飯田勝美刻 牡丹図純銀製香炉
牡丹の花言葉・由来
牡丹の花は一輪でも豪華に咲くため原産国中国では「百花の王」「富貴花」「花王」etcと呼ばれ賞賛されてきました。気品、風格に満ちています。
日本では「枕草子」に記載があり、平安時代に遣唐使が薬用植物として持ち込んだのが最初だといわれています。
古来、美人の立ち居振る舞いの例えとして「立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花」と表現されました。闊達な現代美人には敬遠されるかも……。
上手伊万里染付牡丹図大鉢 | |
朱塗牡丹図汁椀 | 伊万里牡丹図長皿 |
芸術の題材としての牡丹
古くから図案・意匠に人気の牡丹
牡丹の図案は、豪華で縁起の良いイメージから掛軸、ふすま絵や調度品、衣服、紙、家紋、欄間、工芸品といたるところで開花しています。
短歌や俳句に詠まれたり、能や歌舞伎、落語などの演目としても牡丹は登場し、身近な存在です。
唐獅子牡丹の意味
骨董・古美術好きとしてよく目にするのは唐獅子と牡丹の組み合わせです。
なぜ獅子と牡丹なのでしょう?諸説ありますので分解説明します。「唐」は中国から伝わってきたという意味。獅子は百獣の王、牡丹は花の王、王様同士の組み合わせで最高におめでたい組み合わせといえます。
強い獅子の弱みはたて髪に寄生する毒虫(どんな?見たことないです)。噛まれると最悪、獅子も死にいたるとか。この毒虫を退治してくれるのが牡丹の花に溜まる夜露。獅子の安住の地は牡丹の花の下。獅子が傍に居れば花も摘み取られずにすむという共存共栄が成立。両者は助け合い精神みなぎる仲なのです。
能や歌舞伎の演目である[石橋・しゃっきょう]は、唐獅子牡丹の世界観を舞台で目にすることが出来ます。牡丹が咲き誇るなか、獅子がひらひら舞う蝶を相手に子犬のように戯れる情景は、色彩鮮やか、豪華絢爛、華やかさで人気の舞台です。
日本文学に登場する牡丹
与謝蕪村、松尾芭蕉、小林一茶、高浜虚子、夏目漱石ら多くの文学者が牡丹を詠んでいます。正岡子規の一句です。
「一つ散りて 後に花なし 冬牡丹」どんな情景が浮かびましたか?
牡丹は二季咲きと寒(冬)牡丹(二季咲きの春の蕾を摘み取り秋の蕾のみを育て冬に咲かせる)があります。寒牡丹は11月~1月に花を楽しみます。日本画や写真で雪中、藁囲いの中で健気に咲いている牡丹をご覧になったことはありませんか? チョッピリ春を先取りした感じで心持ち暖かくなりますね。
牡丹金具付胴乱各種 |
富貴を願って牡丹を飾る
絵画や掛け軸、浮世絵にも描かれている牡丹ですが、身近なところでは花札。6月の花として「牡丹と蝶」「牡丹に青短」「素札(カス札)2枚」があります。
余談ですが韓国にも花札があります。これは日清・日露の軍事関係者が韓国に持ち込んだのがブームを生み定着したのだそうです。しかも韓国で新しいルールの遊び方「ゴー・ストップ」が生まれ、逆輸入で日本に伝わり「コイコイ」になったそうです。お互い影響し合っていますね。
銀製牡丹に蝶簪・白珊瑚牡丹帯留 | |
荒巻秀美作 象牙彫牡丹首飾 |
こわ~い牡丹
中国の『剪灯(せんとう)新話』を土台に、明治の落語家・三遊亭圓朝が脚色した「怪談・牡丹灯籠」があります。
ストーリーは若い恋人同士の悲しくもロマンティックかつゾゾッ!とするお話です。真夜中、生前に恋した若者の住む家に下駄のカラ~ン、コロ~ンの音と共に現れるお露さんと下女お米主従。牡丹灯籠(提灯)を手に夜な夜な若者の家に通うというお話。幽霊界ではどうも異質の幽霊とみえて御足があったようです。
日本三大怪談話「番長皿屋敷(お菊さん)・四谷怪談(お岩さん)・牡丹灯籠(お露さん)」とヒロインは美人揃い。会いたい方は夢に見て下さい。私は牡丹餅の夢を見ることにします。
いかがだったでしょうか?神社仏閣など古い建物の木彫としても牡丹を見ることがあります。日光東照宮の眠り猫も牡丹と一緒ですね。ぜひ探してみてくださいね。
#骨董舎のお留守番でした。
古好屋グループ 骨董舎 〒371-0023 群馬県前橋市本町1-2-13煥乎堂前橋本店3F TEL090-2660-8011 Mailkottosya@shunet.co.jp 営業時間:午前10時~午後6時30分 火曜定休 |
◎古好屋 HP http://antiques-store.com/ 営業時間 10:00~18:30 火曜定休 電話 090-2660-8011 Mail kottosya@shunet.co.jp |
伊万里染付牡丹図蕎麦猪口各種 | |
香取正彦作 牡丹図合子 |