前橋の街なかをめぐる、文化と歴史の散策
当店は老舗書店「煥乎堂(かんこどう)」の3階に位置しています。
明治初期創業、前橋の街なかにある老舗書店「煥乎堂(かんこどう)」
かつては教科書や郷土資料などの出版も手がけ、長く地域の知と文化を支えてきました。
店名の「煥乎堂」は、『論語』にある「煥乎として其れ文章あり」という言葉に由来します。
「明るく輝かしいさま」を表す言葉で、地域に文化を届けてきた煥乎堂の歩みを感じさせる名前です。
現在は書籍だけでなく、楽器売場や音楽教室も備え、前橋の文化を身近に感じられる場所のひとつとなっています。
現在、前橋市では「第一回前橋国際芸術祭2026」が開催され、
街なかでもさまざまな芸術や文化に触れる機会が増えています。
そこで今回は、そんな煥乎堂前橋本店の3階にある「骨董舎」を起点に、
街なかをぐるっと歩きながら楽しめる、文化や歴史にまつわるスポットをご紹介します。
まずは中央通り商店街へ
煥乎堂を出た東側には、中央通り商店街があります。
アーケードが続く商店街なので、天候を気にせず食事や買い物、散策を楽しむことができます。
通りを北へ進むと、街なかの広場や休憩できる場所もあり、ひと休みしながら街の雰囲気を楽しめます。



さらに北へ進むと、弁天通りのアーケードへとつながり、
その先には「比利根(ひとね)橋」が現れます。ここからは、アーケードを抜けて広瀬川沿いへ。

比刀根橋の「ひとね」ってどこから?広瀬川との意外な関係

「比利根橋」という名前は、この川の古い呼び名に由来しています。
前橋市の資料では、現在の広瀬川は、かつて利根川の本流だった河道を流れており、古くは「比刀根川(ひとねがわ)」と呼ばれていたとされています。江戸時代には農業用水や生活用水として利用されるほか、舟運にも使われていました。
現在の広瀬川に架かる「比利根橋(ひとねばし)」は、もともとこの川が「比刀根川(ひとねがわ)」と呼ばれていたことに由来する橋名です。その歴史を今に伝えるのが「比刀根橋」です。昭和8年(1933年)に完成した現在の橋は、鉄筋コンクリート造のアーチ橋で、アール・デコ調のモダンな意匠も特徴のひとつです。
「比刀根」という少し珍しい名前を知ってから橋を眺めると、目の前を流れる広瀬川が、
かつての利根川の流れにつながっていたことにも気づかされます。
一方で、橋のたもとには、当時は模範的なものとされていた頑丈な防空壕がありました。
しかし、激しい爆撃と火災によって、そこへ避難した方々が犠牲となるという、痛ましい歴史も残されています。
現在、橋の北側にある緑地には「前橋市戦災被爆者平和記念碑(慰霊碑)」が建立され、毎年追悼式が行われています。
こうして見てみると、比利根橋は単なる川を渡るための橋ではなく、前橋の近代化や戦争の記憶を今に伝える場所でもあります。
また、この比利根橋(ひとねばし)は、群馬で活躍された久保繁造さんの作品の題材にもなっています。
久保繁造は1911年に現在の高崎市に生まれ、群馬を中心に制作活動を続けた画家です。
前橋市民展の創設にも携わるなど、地域の美術文化の発展にも力を尽くしました。前橋市が収蔵する作品も多く、前橋の街や人々を描いた作品を残しています。橋そのものの姿だけでなく、そこに刻まれた前橋の歴史にも思いを巡らせながら歩いてみると、また違った風景に見えてくるかもしれません。当店にも、久保繁造の作品を展示しております。ご来店の際は、ぜひこちらもご覧ください。

比刀根橋を描いた作品と思われます。


広瀬川沿いを下流へ進むと、川の両側に植えられた柳が風になびき、心地よい風景が広がります。
川のせせらぎや水の流れる音、風に揺れる柳を眺めながら、歩くだけでも自然を身近に感じられるのが広瀬川沿いの魅力です。
そんな広瀬川の流れや柳の風景を楽しみながら、さらに下流へ進んでいくと「絹の橋」という、
前橋を象徴するような名前の橋が架かっています。
絹の橋


絹の橋から川沿いを歩いて1~2分ほどのところに、前橋文学館が見えてきます。
前橋文学館


広瀬川河畔にある「前橋文学館」は、前橋ゆかりの詩人や文学者を紹介する公立の文学館です。
近代詩の父と呼ばれる萩原朔太郎を中心に、原稿や愛蔵品など、貴重な資料を数多く収蔵しています。また、朔太郎のほか、平井晩村など前橋ゆかりの詩人たちの作品や業績も紹介されています。
さらに、川向かいには移築・復元された「朔太郎の生家」があり、書斎や土蔵などを見学することができます。広瀬川の風景を楽しみながら、前橋が生んだ文学と、その歴史に触れることができるスポットです。
川のほとりには萩原朔太郎の詩碑だけでなく、朔太郎賞を受賞した詩人たちの碑も点在しており、散策しながら言葉の世界に触れることができます。


文学館を右手に広瀬川沿いをさらに進み、横断歩道を渡って街なか方面へ。
2本目の路地を左に曲がると、「まえばしガレリア」が見えてきます。
アートと暮らしが交差する新たな拠点「まえばしガレリア」

広瀬川河畔や銀座通り周辺を歩いていると、緑をまとい、立体的に積み重なったような特徴的な建物が目に入ります。2023年5月にオープンした複合施設「まえばしガレリア」です。
かつて映画館があり、地域の人々に親しまれてきたこの場所は、現在では前橋の新たな文化拠点として生まれ変わりました。建物内には現代アートのギャラリーや店舗、住宅などが入り、アートと日々の暮らしが自然に交わる空間となっています。建築家・平田晃久さんが設計を手がけた建物で、緑に囲まれた中庭を中心に、ギャラリーや店舗、住宅などが配置されています。「一本の樹の下に人が集まるように」という発想から生まれた、前橋の新しい街の風景のひとつです。
現在開催されている「第一回前橋国際芸術祭2026」では、まえばしガレリアも主要な会場のひとつとなっています。館内のギャラリーでは、現代アートを紹介する展示が行われ、建築そのものと作品を一緒に楽しむことができます。 前橋の街なかを歩く中で、歴史ある建物や広瀬川の風景とはまた違った、現在の前橋の文化や新しい街の姿を感じられる場所です。
来た道を戻って左へ曲がり、1~2分ほど歩くと左手に「アーツ前橋」が見えてきます。
アートで街をつなぐ美術館「アーツ前橋」の魅力


アーツ前橋は、前橋市の中心市街地に位置する公立美術館です。
かつての商業施設(旧西武百貨店別館)をリノベーションして2013年に開館しました。
白いパンチングメタルの外壁が目を引く「アーツ前橋」は、街なかの元デパート別館を再生して誕生した前橋市の公立美術館です。「創造的であること」「みんなで共有すること」「対話的であること」の3つをコンセプトに掲げ、現代美術を中心とした多彩な企画展を開催しています。
現在開催されている「第一回 前橋国際芸術祭2026」では、アーツ前橋がメイン会場のひとつとなっています。
2026年9月19日から12月20日までの会期中、現代美術だけでなく、詩や音楽、映画、建築、など、
さまざまな表現に触れることができます。館内は展覧会を鑑賞するスペースだけでなく、1階には誰でも無料で立ち寄れるカフェやミュージアムショップ、図書資料を閲覧できるアーカイブが備えられています。
東和銀行本店の野外彫刻「碩」
続いて、建物沿いの坂道を上がって大通りへ出たら、左へ進みます。
しばらく歩くと、左手に東和銀行本店があります。その敷地内にある憩いの広場には、
群馬県出身の彫刻家・分部順治(わけべ じゅんじ / 1911~1995年)による作品「碩(せき)」が設置されています。
分部順治は、日本芸術院会員を務めるなど、長く彫刻の世界で活躍した彫刻家です。群馬県内にも数多くの作品を残しており、前橋市の公共施設や公園などでも、その作品を見ることができます。「碩」がどのような姿で表現されているのか、実際に作品を眺めながら、街なかに点在する彫刻を探して歩くのも、前橋散策の楽しみのひとつです。




また、清水多嘉示(しみず たかし)の「愛」も展示されています。
<長野県出身1897年~1981年 ブールデルに師事し日展等で活躍した彫刻家>
1979年5月の本店完成に際し、「国際ソロプチミスト前橋」から寄贈されたものです。
それ以来、長きにわたって地域の人々に親しまれ、現在も大切に維持されています。





ここから風情ある馬場川通りを歩くのも良し、大通りを県庁方面へのんびり進むのも良し。
前橋の街には、豊かな水と緑、そして歴史やアートの魅力がいたるところに息づいています。
ぜひこの機会に、街の文化に触れながら散策を楽しんでみてはいかがでしょうか。
散歩の合間や帰り道には、ぜひ「骨董舎」へもお気軽にお立ち寄りください。
多彩なジャンルの古美術を取り揃え、皆様のお越しを心よりお待ちしております。

【骨董舎】
〒371-0023群馬県前橋市本町 1-2-13 煥乎堂前橋本店3階
営業時間:AM 10:00 〜 PM 6:30
定休日:火・水曜日 第二日曜定休
TEL:090-2660-8011

