漆・うるし「塗り椀」を使ってみませんか?
漆器の器は扱いが面倒、難しいと思われがちですが、
昔から使われてきたという実証が優れた器だということを証明しています。
漆器は英語で「JAPAN」といいます。
「日本」を呼び名とする国を代表する美術工芸品です。
木に漆を塗ったお椀は保湿性や断熱性に優れ、手には熱さが温もり程度の感じで伝わり、おまけに冷めにくいという特徴が器としてベストだといわれる由縁です。
塗り直しや修復で長く愛用できる
漆製品は、ヒビや欠け、剥がれなど修理が出来ます。
色あせた場合には塗り直しも可能です。ただし補修の場合、漆は年月で退色する性質であるため、同色に仕上げるのは難しさがあります。思い切って全体を新しいカラーにして楽しむのも気分一新になりますね。
漆塗の製作工程
木地作り
素地は天然木を半年から1年程寝かせてしっかりと乾燥させます。椀には欅(けやき)、水目桜(みずめざくら)、栃(とち)、桂(かつら)などの木を使います。
布着せと下地
椀はロクロで形を作り、生漆を全体に摺り込みます。
乾いたら碗の傷みやすい部分や厚みの均一性を保つために布(木綿、寒冷紗や麻布)を「布漆・糊漆」で塗り込み補強します。漆器の強度を出す大切な工程です。
次は下地作りです。
下塗りの前に布地の上に「地の粉漆」、「切り粉漆」、「錆漆」を塗ります。塗り、乾燥、研ぎの工程を何度も繰り返してようやく中塗り、上塗りに入ります。
上塗り
上塗りは漆を均一の厚さに仕上げる職人技が必要な難しい作業です。
下塗りから上塗りの一連の作業は3ヶ月以上も掛かります。それは一定の湿度を保ちつつ乾燥させるのでそれなりの時間を必要とする作業工程だからです。
塗りも大事ですが研ぎ出しの良し悪しで完成度が左右されます。
朱や黒の真塗とは別仕上げの「絵付け碗」は装飾を施します。
蒔絵、沈金仕上げなどになります。蒔絵は漆筆で模様を描き、金粉、銀粉などを蒔き、研ぎ、磨きを数回繰り返し仕上げます。
沈金は専用刃先で絵柄を彫り、出来た溝に金粉、銀粉箔や顔料を漆で接着し、磨きを掛けて仕上げます。蒔絵より彫りの分、一手間かかりますね。他に螺鈿細工を施した高級品もあります。
現在はいまあげた伝統技法の他にスクリーン印刷などの簡単技法が取り入れられ、簡単加飾が可能となりました。数がこなせるため安価になり利便性が受けています。
ただ、伝統技法の完成品と比べれば手作りの奥深い仕上がりには到底およばないと思います。
漆器の取り扱い方法
- 直射日光を避けます。長時間の紫外線は変色の原因になります。
- 水、ぬるま湯でスポンジに中性洗剤を付けて洗っても問題ありません。
- 固い物でこすると傷が付きます。
- 乾燥に弱いため長時間の冷蔵庫収納は厳禁です。
- 電子レンジ、食洗機、乾燥機は使用禁止です。
- 長期間、使用せず食器棚に保存するときは水入りコップを入れておくと乾燥によるひび割れを防ぐことが出来ます。
どうです?漆椀ってかなりの時間を費やした工芸品でしょう。お高いと思っても使い心地が良く何十年も使用出来るのです。お気に入りの1品を末長く愛用されては如何でしょう。
さて、いつもの余談です。おとぎ話でお碗といえば「一寸法師」でしょうか?
彼の乗ったお椀は塗り椀のようですよ。数種類の絵本に見事な花模様の漆絵が施されていました。京へ上るので田舎者と馬鹿にされないように目一杯ファッショナブルに決めたのですね。考えることは昔も今も変わりません。
以上 #骨董舎のお留守番でした。